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真っ赤な真実8

「…若奥様、みのり様ならここですよ。どうなさいました?」

みのりはエアートランポリンの脇で使用人の一人に抱き抱えられていた。

みのりは、少し赤い顔をして咳き込んでいる。

噎せているように見えるけど…。

あたしの姿を見るなり、
「まんま~~!!」と泣きながら、激しく咳き込んだ。

「まぁまぁ、お咳が出てしまいますね」

使用人はそう言いながら、みのりの背中を軽く擦る。

やっぱり、噎せているように思える。

あたしだって、普通の咳と、噎せている時の咳の違いくらいわかる。

「良かった…。みのりの姿が見えなくて心配したのよ…」

あたしはそう言いながら、みのりを受け取ろうと手を伸ばす。

「エアートランポリンの底に少しだけ水が入ってきていたようなんです」




このエアートランポリンは"起きあがりこぼし"の原理を応用して水の上に浮かせているのだ。

転覆防止の為、側面も透明のエアーマットに囲まれており、その高さは150cmほど。

その高さを跨いで乗り込むことは難しいので、開閉式のドア状に一部が作られているのだが、そのドアの番(つがい)部分から、少しずつ水が侵入してくるのだ。

この乗り物は、4歳くらいの子供になれば、その不安定さ所以に、子供の遊び心に上手く火を付けてくれる。

実際に、ひいろと桃子ちゃんはウォータースライダーに乗る前までは、そこで暫く遊んでいた。
(凄くはしゃいでいたって分かる。だって、二人の歓声と絶叫が邸の庭に響き渡っていたもの)



「少し水を飲んだようなんです」

そう言って、彼女はまた背中を擦り始めた。

「まんま~!」

みのりは、あたしに懸命に手を伸ばし、もはや、噎せび泣こうとしていた。

そのみのりに向かって、あたしは手を伸ばすが、彼女は、みのりの背中を擦ること意識が集中しているのか気づかない。

「清田さん?」

ありがとう。もういいわ。そう彼女に声を掛けようとするのを、向こう側から走ってきた桜子の怒鳴り声で掻き消される。

「あなた!みのりちゃんに何をしたのよ!!」

凄い剣幕…。

あたしが怒られていなくても身体が縮む。

「さ、桜子?あのね?彼女はみのりを助けてくれたのよ?」

あたしの言葉に桜子は、
「先輩!見てくださいよ!このマットの上にこんなに水が上がっているんですよ!」

確かに、水は入ってきていた。
トランポリンの中央にうっすらと溜まっている。2~3cmといったところか。

「えぇ。ですから、こうして、みのり様をお助けしたんですわ」

言い放つその瞬間に、ホイっと、みのりをあたしに手渡し、桜子と対峙する。

普段は大人しくしていて、大御所の新庄さんの影に隠れているような人なのに…。

「ふんっ!わざとらしい言い訳をしてくれるわね?」

桜子は不敵な笑いを讃えながらも、眼光は清田さんを捉えて、決して離しはしない。

桜子に睨まれたのなら、普通の人なら、確実に即座に目を反らしてしまう。

ところがだ。

こ、この人…。
桜子に睨まれても全く怯まない。

それどころか平然としている。

というか、全く動じてない?


この清田さん、仕事中をするときは新庄さんの影に隠れて目立たぬようにしている。

あたしと子供達だけの時は特に。

だけどね、司がいるときは少し違う。
自分を前に出すようにしている時があるなと思うのよね。
(いつもより、積極的に動くからね)

気のせいかな?

「青池さん?それは言いがかりというものですわ?それとも何か証拠でも?」

「あっ…あっ?あっ?!青池さん~?!」

桜子の顔面が一瞬青く変化したと思ったら、今度はみるみるうちに赤くなってきた。

身体もワナワナと震えている。

そんな桜子を見て、清田さんは、
「山崎さんが、ここの近くにずっといらしたのですよ?このわたくしが何か変な動きをしたのなら、いくら警護の対象が若奥様とは云え、気付かないはずはないでしょ?フンッ」

確かに、山崎さんが数メートル離れた場所から、全体を見回っていた。
清田さんの言うとおり、何かあれば山崎さんが対応するはずだ。

今、空耳でなければ確かに『ふんっ』って、聞こえたよね?
それって、桜子を鼻で笑ったってこと?

その行為に桜子はますます顔が赤くなってきている。

今のあたしは、桜子じゃないけど、このやり取りを見て、同じように顔が青くなったり、赤くなったりしているに違いない。

「さ、桜子~?心配してくれたんだよね?でも、こうして、みのりも無事な訳だし…。ねっ?」

みのりを片手で抱き、桜子を落ち着かせるべく、背中を擦りながら言い聞かせた。

あたしの言葉に、
「先輩!この人は水鉄砲で遊んでいるみのりちゃんを、わざわざこのエアートランポリンに連れてきたんですよ?!」

桜子は、見たそのままを話しているのだろう。
嘘は付けない人だ。

「みのり様が行きたいとせがんだのですわ」

確かに、それもあり得ないことではないけど…。

「清田さん、みのりが行きたいって言ったの?」

あたしの言葉に、
「わたくしは道明寺家に仕えているのですよ?信じられないとでも?!」

清田さんはあたしの言葉に即座に反論する。

「まんま~、まんま~」
みのりは不穏な空気はお構いなしに、あたしの顔をペチペチと触ったり、あたしの胸に自分の顔を埋めて、少しずつ落ち着いてきた。

「あ、あの~、お二人さん?みのりもこうして、元気な訳だし?ほら、こんなに太陽も明るいしさ。ねっ?」

あたしの言葉に、睨み合っていた二人が(どちらかと云うと桜子が一方的にだが)、今度はあたしを真っ向から見つめる。

二人共あたしの次の言葉を待っているように思えた。

どうしたらいい?
ちゃんと言ってあげなきゃ…。

二人の目を見る。

「どっちも信じるよ。どちらも言っていることに間違いはないんでしょ?」


そう言って、あたしは二人を見つめ返す。



あたしがそう言った後の二人の表情を見ていたら、何かが変だ。


何だろう。


何か引っ掛かる事がある。


だけども、それが"何?"と言われると、わからない…。



「どちらも言っていることには間違いはありません。若奥様」

声のする方を見ると、邸の方から新庄さんがこちらに向かって歩いてきた。

清田さんは、新庄さんの言葉に一瞬、苦い顔をするも、「ありがとうございます」と言った後に頭を軽く下げた。

「清田が、若奥様と青池様に不快な思いをさせてしまいましたこと、深くお詫びいたします。完全にわたくしの教育不足です」

新庄さんはそういうと、あたしと桜子に向かって頭を長々と下げた。
清田さんは新庄さんに下がるように云われて、その場を去った。

それと同時に、ひいろと桃子ちゃんが、「ママたち何かあったの?」と二人揃って手を繋いで立っている。

桜子は不本意とでも言いたげだった。
けれど、
「まっ、先輩らしい仲裁の仕方ですし?子供たちも見ていることですし?新庄さんが言うのなら、間違いないのでしょ?」
まだ、不安そうではあるが、そう言って矛を収めてくれた。

新庄さんは、あたしの友達や、当然だが司やF3にも信頼がある。
タマさん同様に、長年この邸に。いや、この道明寺家に仕えて下さっている人。
あたしが司と付き合っているときから仕えているのだから。

司がこの邸に戻ってきては、朝早くに邸を出ると教えてくれているのは新庄さん。

その事もあり、名前を出せなかった。

けど、だからこそ、司の事を教えてくれているのは新庄さんなのだと伝えておけば良かった。

あたしがあの時、行動をおこしていれば、事態は少しは変わっただろうか?
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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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