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愛する人へ (中編)

折角の休みだと云うのに、つくしは今度は青森に飛んでいる。
何でも、カタログに載っている商品の品質がだいぶ落ちてきているとのこと。
(利用者からの何件かのクレームで気づいたらしい。メールや、文章での勧告では改善が無いようで、現地に飛ぶことになった。昔の俺なら"ぶっ殺す"の一言で片付けやるのに)

俺は今、立樹とシッターとで庭でサッカーをさせられている。

ガキの癖に蹴る力はわりと強ぇ。

まっ、俺とつくしの子供だから、パワーは人並み以上だ。



少し離れた所に、スマホを片手に紫陽花を眺めているババァ。
もとい、俺の母親がいる。

スマホで紫陽花の写真でも撮ってんのか?

何だか、知らねぇが、邸の中に居ればいいものを、この炎天下に庭に出て来ている。

今日はやたらと蒸し暑くねぇか?

「婆さん、そんなとこにいると、ボールか当たるかも知れねぇだろうが?
邸の涼しい所に行ってろよ」

俺の声かけにこちらを見た。

「婆さんとは、わたくしのことですか?」

「あっ?それ以外ここに婆さんがいるかよ?」

わざとキョロキョロして見せる。

俺の様子を見てから、何事も無かったかのようにまた紫陽花の方へ目線を移している。

「鍔の広めの帽子を被って参りました」

ババァ…

たくっ、人の云うことなんか、聞きやしねぇ…

俺は、暑さもあり少し休むとシッターに告げ、その場から離れようとした。

「おばあ様ーーー!!!」「大奥様ーーー!!!」
「「「危なーーーい!!!」」」

立樹とシッターたちのこの声で、振り返り、
母親を見る。


全てがスローモーションに見えた。


自分でも不思議だ…


頭の中で何も考えてないのに身体が動く事ができた。








『奥様、申し訳ございません!!』

電話の向こうで、腰を床に付くのではと思う位まで折り畳んでいるのが分かるほど。
(見えないけどさ)

「あなた方はもう仕事を上がる時間でしょ?
もうお帰りなさい」

『奥様、とんでもありません。この間の失敗もありますのに…』
『そうです、奥様。奥様に直接お詫びをしなければ、私ども明日からどうすればよいか…』

向こうでは電話をスピーカーにして対応している。

「これから、新幹線に乗り込みますから、そちらに着くのは十時を回りますよ?大事に至って無いようですから、安心して、次の者と交代しなさい。あなた方がそんな風に構えていたら、かえって立樹が気に病むでしょ?」

『奥様…』

「よし、分かったわね?みんな言うことを聞いてよ~?
夕飯の支度はお願いするわね。
ねぇ、開万か、うららは近くにいるかしら?電話を取り次いで貰いたいのだけれど」

プライベートルームに兄妹三人でいるらしい。

プライベートルームには家族以外は極力部屋には入れていない。


暫くしてから、
『何~?ママ?』
電話口にうららが変わった。

「うらら?あのさ、リツはどうしてる?」

『リツ、ほらママだよ』

『ママ~、早く帰って来て…。ママ…またママのお胸をチクチクさせちゃったよ…ごめんなさい。すぐに来れないの?』
「新幹線に乗って行くからね。りっくん、分かるでしょ?乗り物は着くまでに時間がかかるのよ?分かるわね?」

泣きながら、ウンウン言っているのが聞こえる。

『ママ?うららがママの代わりにお風呂とご飯のお世話するから。任せておいて。ママ、仕事は終わったんでしょ?』
「終わったよ。これから新幹線に乗るから…」

そう告げようとする横で、秘書の小宮さんが、「つくし様、お子様とお話中ですが、少し宜しいですか?」そう話してきた。

何時もなら、会話の途中で割って入る事など絶対にしない。
大事な用件?
「うらら、ちょっと、待って」

「小宮さん?どうしました?」

「プライベートジェットが到着しました。青森空港から飛行が可能です」

「…だって。うらら、飛行機で帰るから…そうね…九時前には着くから。頼んだわよ。お兄ちゃんいる?」
『ちょっと、待って…。ママよ、代われだって』

うららは電話の後ろの方で、「いい子になっていたらママが早く帰って来てくれるからね」と立樹に言い聞かせているのが聞こえる。

『何?』

開万は電話を持って部屋を移動しているようだ。

『自室に入ったから、うららも立樹もいないよ』

さすが、察しがいいわね。

「そう…。あのさ、お父さんはどうしてる?」

『父さん、おばあ様の所にいるんだけど、何か変なんだ…』







お母様の事を思う。

子供達に何かあっても、すぐに向かえないもどかしさ。
何時も切なかっただろうなって。
同じ立場になって初めて辛さが分かる。



スマホをタップする。

「ほら、見て?」

小宮さんに画像を見せる。

そこにはサッカーボールを蹴り合う親子の姿が収められていた。

「これは?もしかして…」

「そう、お母様よ。留守にすることを詫びたら、紫陽花の花を撮る序でに取りましたから。そう書いて送ってきたのよ。何枚かあるのよ…」



立樹の笑っている顔も



司の笑っている顔も






夜空に向かって飛行機が飛び立った。



窓から空を眺めると、幾千もの星々が光を放っていた。


移動時間がとても、とても長く感じられた。

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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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