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ひな祭りは麗らかに1

何処へ行ったんだ?

かれこれ、二十分はこの広い屋敷の中を歩き回っている。
こういう時ほど、この家の広さを恨めしく思ったことはない。

『今日は二人とも休みの日だから、邸でゆっくりとしましょ。ねっ?』
そう言ってきたのは他でもない、愛する妻からだ。
ベッドから起き上がるときに、俺の髪をそっと撫で、キスを額に落とした後に、するりとベッドから降り、可愛い言葉を言い残して出て行ったきり。

若い頃なら、その瞬間に身体を引き寄せて離さなかっただろうに。

屋敷の使用人たちも、昔と違って、俺が歩き回っていても、さほど恐れることなく、少しだけ緊張感を抱いてるとは思うが、顔面蒼白になること自体、少なくなってきた。
だが今の俺は、昔を彷彿とさせる険しい顔へと、徐々に変貌しかけているようだ。

まっ、昔の俺を知っている使用人も少なくなったが。
すれ違う使用人が、俺の顔を見て腰を九十度にまで折り、通り過ぎるまで顔をあげようとしない。

廊下に飾ってある、十五世紀後半のルネサンス時代の頃の花瓶を投げつけてやろうか。

そうしたら、顔をあげるか?

そういやぁ、以前、花瓶を割ったのは何時だったか?

廊下を歩きながら、ふと、外庭の色彩に目を奪われた。
一面のガラス張りのため、この庭そのものが、絵画のようだ。
今年はエルニーニョ現象の影響もあり、冬が暖かく、何時もより早くに梅の花が咲いているのが分かる。

若い頃は、この濃い桃色の花も、桜だと思っていたのにな。











「パパ、このお花ピンクで凄く可愛いでしょ?春に咲くんだよ。名前何て言ってたかな?パパは知ってる?」
「あぁ、桜だろ?」

俺の腰辺りから、可愛い質問が聞こえた。
だから、そう答えて、微笑みながら、声のする斜め下を向く。
目線の先には、強烈に眉間に皺を寄せた顔があった。

「はぁ~。違~う、全然違うよ~~。そんなことも分かんないの?やっぱり、ママがいいよ~~。何で、パパがお休みで、ママがお仕事に行っちゃったの?いっつもパパがお仕事なのに~~。
パパはいなくて平気だけど、ママはお邸にいて欲し~~い」

ダブルのショックで呆然としてしまった。

桜じゃない…?

春に咲く、ピンクの花っていや―、桜だろ?

それもそうだが、最後の言葉に、頭を鈍器で殴られたような気がした。
(パパはいなくていい…いなくていい…)

いや、完全に心は砕かれた。

俺って、この手の言葉にかなり心が折れる。(らしい)息子たちに言われても何とも思わないのだが…。(たぶん)

思い起こせば、長女、次女共に、俺よりも断然ママ派だった。
(言っておくが、パパも好きだけど、ママの方が好きってやつだ!決して、嫌われてはいないぞ!)

ママって云うのは、他でもない、俺の唯一愛する女のつくしだ。

いや、娘たち三人とも愛しているぞ!!

だとすると、四人の女を愛していることになるのか?

いや、違う。つくし、お前だけだ!

う~ん、でも、娘たちは可愛い…。

う~ん、やっぱり愛していることになるのか?

「何、ぶつぶつ言ってるの?愛してるとか、キモいんだけど。それと最近、何だかママと同じに、ブツブツ言うようになってきたよ」

つくしと似てきたと言われて、しっかりと怒りたいのに、少しだけ顔が緩んでしまっていた。

「おい、うらら。キモいはないだろ?パパは大いに傷つくからな」
「経済界の魔王なのに?」

最近のマスメディアでの俺の呼び名。

「……。魔王だとしてもだ。娘にそんなことを言われたら、心が砕け散るんだよ」

「魔王って、鬼とか、悪魔とかの意味なんでしょ?」

小学二年生の可愛い、可愛い娘でなければ、睨み付けて、硬直させてやるところだ。

「まぁ、そうだが…、うららはそう見えるか?」
ジーと俺の顔を上目遣いで見てくる。

可愛い…。

可愛いすぎる…。

一番つくしに"顔は"似ていると思われる三女のうらら。

「見えなくもないかな。う~ちゃんたちの意見は違うと言いたい所だけど、他人が見てそうなら、そうなんでしょ?」
何だか、さらに心が砕けそうなのを奮い起こす。

「うらら、ママが帰ってくる前に仲良く二人で飾るんだろ?」
「そうだね。ここはライバル同士、力を合わせる事にしましょうか」


うららがこちらを見て、軽くウインクする。


可愛い…


可愛い、俺の娘…


ずっとそばにいてくれ…
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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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