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募る思いは誰に届く5

道明寺邸の広大な敷地の周りは勿論、塀で囲まれている。
そして、その塀の内側は道路の街路樹宜しく大きな木々が屋敷を更に囲っているのだった。

邸まではまだ距離があるというのに、その木々たちの青葉が建物の隙間から見えてきた。

西門邸を出てすぐの頃は、運転手を交えて少しばかりの会話をした。

その後はと云うと、とりわけ何を話すわけでもなく各々の役目を遂行していた。

運転手は快適な運転に従事していた。

司は座り心地が最高に良いシートにゆったりと凭れ、目を閉じたまま窓の方へ少しだけ顔を傾けていた。

その横顔は端正で和らいでいる。

休日以外の日は分刻みで動いている身の為、体をしっかりと休ませるのも重要任務だ。

三澤はというと、絶えずタブレットとスマートフォンに目を配っていた。
司と行動を共にする者は、常に外部と連絡が取れるようにしている。

もちろん三澤もそのうちの一人だ。

今まさにタブレットとスマートフォン数台を操っている。

屋敷内に起こっている事だけでなく、仕事上の関係者からの連絡やメールなど即座に対応する必要があるからだ。

司が休日だと云っても相手も日本人で休日を過ごしているとは限らない。

アメリカの大使の奥様の妊娠の知らせから、経済再生の専門家会議での意見交換に関するものまでの様々な案件が、西門邸からの往復の時間だけで、数十件のメールは舞い込んできていた。

今の所は直ぐ様に司の耳に入れなければならないような仕事上の重大案件は無いようだ。

その事に心底ほっとしていた。

今日はそのような重大案件は是非に避けたい。
もし緊急の仕事でも入ろうものなら、暫く道明寺邸に安息日は訪れないだろうと、これまでの経験上よく知っている。

今は何よりも邸からの報告を待っていた。


?!


よし!!


来たぞーーー!!!



待ちに待った報告だ。

三澤は隣に座る自身の主をそっと見た。

司は目を閉じたまま窓の方へ少しだけ顔を傾けていた。
長い足を優雅に組み、シャープだが男らしい頤に親指をあてがい、物思いに耽っているようだった。

三澤が声をかける前に、司の長い睫毛がゆっくりと羽ばたくように開いた。


「何だ?何かあったか?」


そう言うと、少しだけ眉間に皺が寄った。


「旦那様。お嬢様方が邸にお着きになられました」

三澤は道明寺家の長女のひいろと、次女のみのりが邸に到着したとの連絡を待っていたのだ。


「そうか」


短い返事だが、顔の緊張が解けて優しい表情を見せた。

プライベートでしか見せない司の表現だ。

この表情を引き出せる人物は数少ない。
勿論だが、妻のつくしと子供達か関することに限る。

三澤は司が所望した幾つかのシャンパンやワイン、そして日本酒が道明寺邸に間違いなく運び入れられたと次々に送られてくる情報を司に伝えた。

司は娘の到着の知らせと、事が滞りなく運んでいることを受けて安心したように少し長めに息を吐き出した。
そして、綺麗な切れ長の瞼をそっと閉じた。

三澤は安堵している司を見て、心底ほっとしていた。

奥様との間に何が起きたのか存じませんが、お嬢様方が上手く取り次いで下さるでしょう。

結婚して何年経とうと道明寺家の安泰はつくしの司に対する対応一つで大きく左右するのだ。

奥様、旦那様との関係の修復をどうぞお頼み申し上げます!!

旦那様も朝から懸命に動いております。


どうか!

どうか!!


三澤は窓の向こうに見える道明寺邸の木々の方向を拝むような気持ちで見つめた。



「…だな…。…上手くいってもらわねぇと困る」



なんと?!



心の中が透けて見えたのだろうか?!

とんでもなく良すぎるタイミングで司が言葉を発した。
思わず目を大きく見開き、司を凝視する。

当の司は片目をそっと開き、三澤の方を怪訝そうに見つめた。

「何て顔をしてんだ?三澤。お前、口が空いてるぞ?」

指摘された三澤は、司が言うようにあんぐりと口を開けて司を見つめる形となっていたのだ。

「も、申し訳ありません。丁度タイミング良く旦那様がご返事されたものですから…」

「返事?…チッ…、声に出していたのか?」

「はい。上手くいって欲しいと呟いておられましたよ。…まさか?」

「…ククッ、その、まさかだな…。ククッ…」

どうやら、司のあの言葉は心のなかの叫びを自然と吐露させ、独り言のように呟いたようなのだ。

司もつくしもお互いに見つめあってきた証だろうか。
最近は司にも"独り言現象"が起きることが極々たまにあるのだ。
と言っても、そんな言動を起こす時は決まってつくしが絡んでいる時だけ。

司は口元を押さえて笑いを堪えている。

三澤に独り言を指摘されたことが恥ずかしい等は微塵も思っていない。

どんな時でも頭の中にあるのはつくしのことで、その事を自身で再確認したから可笑しくて仕方ない。


三澤は、司が昨晩の事で言ってはならぬ言葉をつくしに向けたのではないかと勝手に確信していた。

そうでなければ、廊下に聞こえる位の大声でつくしが司に猛抗議していた等と耳に入るはずがないと。

それにしても結婚して何年経ったとしても、嫉妬心を丸出しにして妻の行動を把握しようとする経済界の重鎮。

そう思ったら、顔が思わず綻んだ。



「おい、三澤。何を急にニヤニヤしている?」

声とともに鋭い視線を感じて視線の方向を見る。

先程まで穏やかな顔をして瞳を閉じていた司が物凄く怪訝な顔をしていた。

「申し訳ありません。旦那様は幾つになられても奥様に対しては、お若い頃と同じようなお心持ちでおられるなと思いまして」
三澤は率直な意見を述べた。

「はっ?若い頃と同じ?」

「はい。奥様の気心の知れたご友人たちとの会食であっても、気がかりで居たたまれなくなるところは、全くお若い時と同じでございます」

三澤の言葉を聞いていた司は瞬時に眉根を寄せた。

三澤は決して主人を小馬鹿にして発言ではない。
"真実"を述べただけだ。

結婚した当初の司は、出掛けるつくしを変装して後を追ったほどなのだ。

「お前、馬鹿か?新婚じゃあ、あるまいし」

そう言い放ち、小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。


「…そうなのですか?失礼いたしました」

では、何故に朝から奥様は憤慨していたのだろうか?

確かに憤慨していたのは間違いないのだ。
お部屋の前の渡り廊下の清掃していた者もそのように証言しているのだから。

だからこそ、道明寺邸から巣立ったお嬢様方が、朝の早くから急ぎ集まり、奥様のお心を満たそうとしているのだから。



考えても、考えてもわからない…。


三澤は、夫婦間て起きたやり取りを事細かく聞くような野暮な事は出来ないと常に思っており、それを実践してきた。

『昨日の帰宅が遅くなった件で奥様に朝から詰め寄った訳ではないですよね?』


そう聞きたいのをグッと堪えているのだ。


もの凄ーーく聞きたいけれどもだ!!



三澤の下さない横顔に司は再度鼻を鳴らした。



そよ風が吹いているようだ。
道明寺邸の塀の中の木々の葉が揺れるのが走行中の車の中からも確認できる。

車は邸の門まで続く長い直線道路に入った。

司は相変わらず窓の外を見ていた。

その窓の方を向きながら独り言を言うように三澤に話しかけた。




「なぁ、三澤。夢の中での俺の行動を怒られた時はどうするのが一番なのだろうな?」




?!!



ゆ、夢?!!




西門邸からの帰り道。

今朝からの最大の謎が一気に深まった三澤なのだった。

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えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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