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募る思いは誰に届く3

道明寺邸を出発してから10分ほど経った。
数十メートルはある平垣に沿って車を進める。
暫くすると、大きな門が見えてきた。
門の前には西門の御弟子さんが待機しており、道明寺の車列が門に到着すると、一礼をして出迎えた。

「夫人は西の棟におります。案内いたします」

そう言うと、弟子は正面玄関口ではなく、大きな庭の方へ足を向けた。

西の棟は総二郎が中学生の頃から使っているところで、完全なプライベートエリアだ。

玄関口には総二郎の妻の優紀が膝をつきニコニコしながら司と三澤を出迎えていた。

弟子は西の棟の玄関口に到着し、優紀の姿を垣間見た時に、一瞬驚いたような表情をしたが、それと同時に凄く安心したような表情を浮かべて、一礼をしてその場から去った。

この邸の中で彼女が普段着姿を垣間見ることが出来る人たちはそう多くはないからだ。

そのような格好で会えるという間柄だということを意味している。

優紀はくすんだピンク色のカットソーに、アンクル丈のゆったりしたシルエットのボトムスを履いていた。

「道明寺さん、お久しぶりです。先程ご連絡頂いた代物はもう少ししたら御用意出来ますから」

「松岡、朝の早いうちから悪いな」

「いえいえ。もうすぐ総二郎さんも帰宅する予定でしたから。少しあがって下さい」

司は"優紀からのこの言葉"を待っていた。

「あぁ、邪魔するぞ」

司は玄関口でそう告げると、邸の中へと入った。









「悪いな。突然、言い始めるからよ。うちの女どもは。まだ、どんなものを使うのか俺自身が分かっていなかったからな」

三澤はそう言って退ける司に同調するように頷いた。
最高級の抹茶を貰いうける事をこの邸に訪問することの最大の口実にしている司を完全に後押している。
いや、この事を最大の理由としなければならないのだ。
三澤はいろいろな複雑な思いも込めて、優紀に向かって深々と頭を下げた。

「申し訳ありませんでした。お伝えすることが遅くなってしまいました」

「頭を上げて下さい。何ともないことですから」

優紀は頭を下げ続けている三澤に声をかけた。
三澤は司が本題の話を持ち出す前に先手を打って出た。
司が単刀直入に問いかけるのを何としても阻止しなければと心に誓い、ここまで同伴している。
それとなく、昨晩の会合での事を聞き出そうと試みた。

「宗匠夫人もお休みだったのではありませんか?」

「私ですか?いいえ。あれだけ遅くに帰宅しても起きる時刻は何時もと一緒なんです。年を取ったのですね」

三澤の問いかけに笑って答えた後、この事を聞くことが良いのか少しだけ迷いながらも優紀は自身の気にしている事を司に聞くことにした。

「つくしは?」

「アイツならまだ寝てるだろ」

司の即答に優紀は凄く安堵した表情を見せた。

「実は、最初の訪問の連絡を頂いた時は、なぜだろうと思って、変な緊張をしていたんですよ」

司はその言葉に眉を潜めた。そして、その言葉を優紀におうむ返しをして聞き返した。

「変な緊張?」

「…えぇ。つくしと、…その、遅くまで遊んでいたことで何かあったのかな?って、考えてしまって…」

「…考えすぎだ」

「本当ですか?はぁ、良かった…。さすがに昨日は酔っているとはいえ、ハシャギ過ぎたなって…」

優紀は独り言のように呟くと、少し眉毛を下げた。

「かなり遅い帰宅だったそうだな?」

つくしは昨晩は何と午前様帰りだったのだ。
なんと2時過ぎの帰宅だった。
かなり、ご満悦で帰宅したのは邸の誰もが知ることだ。

「えっ?!あぁ、やっぱりご存知なのですね…。あっ、てことは…、総も知ってるってこと?う~ん…。でも、まぁいいわ。総だって、道明寺さんたちと朝まで酒盛りすることだってあるし…」

最後の方は完全に独り言で、自分で自分の質問に答えていた。
それから、司の方を見て問いかけた。というよりは、つくしの心も代弁しているように思えた。

「たまには、女同士で楽しく過ごしてもいいですよね?子供達の手も離れて来たんですしね?」

「あぁ、そうだな…」

司は苦笑いして答える他なかった。

「つくしが起きたらきっと喜ぶだろうな~。ひいろちゃんとみのりちゃんが帰って来てくれるんですもの。つくしと昨日話していたんです。何だかんだ言っても寂しくなったって」

優紀のその言葉に、司の瞳がほんの一瞬だが見開いた。

司は真っ直ぐに優紀を捉えた。

「そんな事を言ってたのか?」

「集まったみんなもそう思ってましたよ。子供達の手が離れて嬉しいような寂しいようなって」

「ふ~ん…」

「子育てしている時は、早くに大きくなって欲しいと思ったりするんですけどね。いざ、手が離れてくると差しのべる相手がいなくなってしまって…。そんな話ばかりしてました」

優紀はそう言うと、また眉毛を下げた。

「総二郎の…、う~ん…、夫の世話をすることでは駄目なのか?」

司のこの質問はもはや、総二郎の名を借りて、世の中の奥様方に向けて、いや、つくしに問いかけたようなものだ。

「全然、駄目。夫は子供じゃないでしょ?大人じゃないですか?世の中の男性って妻やパートナーに母親の役割をさせたがるところがありますよね?かまって欲しいみたいな。えっ?まさか、道明寺さんもそうなのですか?」

「どういうことだ?」

「男の人は、子供より自分を一番に見て欲しいという願望とか、そのような行動をとかく取りがちってことですよ。そういうことで愛情の確認するとか…。そう、そういうのはいらないんですよ」


・・・・。


司は優紀の言葉に返す言葉がなかった。

「つくしは昨日は楽しんでいただろ?」

やっと出た言葉がこれだった。
そして、自分たちに(世の中の夫に)向かった少しだけ抗議めいた言葉を反らせようとした。

「えぇ。久しぶりに会った友達とも話をしたんですよ」

「つくし様も大変お喜びになり帰宅されたと報告を受けました。さぞや気の置けない人たちとの会合だったのでしょうね」

三澤も急かさず合いの手を差し出す。

「そうなんです。小学校、中学校と仲の良かった人たちと飲めたんですから」

「そのようだな。飲んだ場所もここ最近は行けないような所だったと聞いたぞ」

その言葉に優紀は肩を竦めた。

「心のお洗濯です。クスクス…。今後もつくしと一緒に遊ぶ時間を持たせて下さいね?」

「良いけど、あんまり羽目を外さない程度にしとけよ」

司がそう言い終わると、丁度内線が鳴った。

頼んでおいた最高級の抹茶の用意が出来たようだった。

「…そう。ありがとう。こちらまで、運んで下さる?…えぇ、…っえ?そう。総二郎さんが…。わかりました」





弟子が大層な桐箱を風呂敷に包んで来た。

司はその包みものを受けとると、その場を後にしようとした。

「総も着いたようですから、もう少しだけゆっくりとして行かれます?」

「いや、別に総二郎に会いに来たわけじゃなぇから」

そうなのだ。
ここに来た最大の用件は済んだのだから。

「用件が済んだから帰るわ」

優紀も何だかスッキリした顔をしていた。

総二郎に本当は直接伝えたい心の中のモヤモヤを、昨日と同様に友人の夫に向かって吐き出す形になったのだから。
(しかも、道明寺司にだ!!)

司を見送りに一緒に広い廊下を歩く。

そこへ総二郎が帰宅し二人と鉢合わせることになった。

「司、帰るのか?」

「あぁ。用件は済んだしな」

「お帰りなさい。総」

優紀の顔は思いを吐き出せた事もあってか爽やかな明るい顔をしていた。

「楽しんで来たようだな?」

「昨日といい、今日といい、スッキリとした~。総、ありがとうね」

この上なく穏やかな笑顔を総二郎に向ける優紀に対して、総二郎は司に訝しい顔を向ける。

司はそんな総二郎の事など全く関していないようだった。
心は当然ながら、邸で眠っているであろう、つくしに向いていた。

三澤は自分よりも、まだまだ若い男女の心の模様を思い浮かべ、フッと口角が上がった。




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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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