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募る思いは誰に届く2

朝の太陽の柔らかな光が降り注ぐ窓越しに腰掛け、巨大な家族写真を愛しい眼差しを向けている。

そう思ったのも束の間、使用人がコーヒーをテーブルに置く頃には、先程の表情とは大分異なり、恐ろしく歪んだものに変化していた。

この写真を眺めながらこのような表現をすることがあっただろうか?

三澤だけでなく、周りにいる使用人たちも、司の怒りとも恐れとも言い難い苦悩の表情をなぜするのか検討がつかない。

「おい、車の用意はまだか?!」

「只今、確認して参ります!」

突然に怒りの形相を向けられた使用人は、直ぐ様リビングから飛び出した。

司は、昨晩のつくしの行動を思いだし、心の内にあるドロドロの感情を何かにぶつけるべく、コーヒーカップをテーブルに叩き着けるように置いた。

今回、司が苦悶の表情となる理由はまだあった。

〈〈お母様からのLINEを見ました。
何かあったのですか?
お母様のお心が疲れているのでしょうか?
お父様は心当たりはないのですか?
とても心配です〉〉

司の長女からのLINEだ。

コーヒーを飲み始めたところで、このLINEが送られてきた。
この内容を見た司は、軽いショックを受けたのだった。











俺の最大の喜びは何だか分かるか?

朝に目が覚めて、俺のすぐ横につくしが寝ていることだ。

結婚して何年経ったとしてもその思いは変わることがない。

幼い頃からデカすぎるベッドに何時も一人で寝て、時間になると起床させられていた。
人のぬくもりや温かさを感じとり、一日のエネルギーに変えていくような朝を迎えたのは、つくしが俺の横で幸せそうな顔で眠ったのを初めて見たときだ。

あの時から、朝の起きがけの瞬間は自分の心を解放出来る時間に変わったんだ。

俺が先に目覚めると必ずすることがある。
つくしの頬に触れることだ。

何時もするようにそっと頬に手を当てた。

愛しい人の顔に触れることが出来る喜びは、触れたくても触れられない時があるからこそ、尊いことだとなのだと改めて感じてきた。

朝一番に、愛しい愛するつくしの寝顔に触れる。
誰にも邪魔されない至福の時だ。
俺にしか許されていない時間だと思うとその喜びも更に増してくる。

幾つになっても変わらない、モチモチした柔らかい頬に触れる。



柔らけぇ…。

すげぇ気持ちがいい…。



そう思っていたのも束の間。
つくしが物凄く切なそうな顔をする。

そしたら、寝ているのにも関わらず涙を流し始めた。

思わず、『つくし…、しっかりしろ』と声をかけたんだ。

すると『司、…司』って、俺の名前を呼び始めたじゃねぇか?

相当に怖い夢を見ているのでは?

そんなにも怖い思いをしている夢の中から、一刻も早く現実に引き戻してあげなければならない。
そう思いながらつくしを抱き起こし、再度つくしの名前を呼び、恐ろしい夢から引き戻そうとしたんだ。

俺の呼び掛けに答えるように目を覚ましたつくしは、俺がいるのに見えてないみたいに朦朧としていた。

それから、肩を抱き締めていた俺の手をスッと払い除けた。

シートをペタペタと触って、『うららと立樹がいない』そう言って顔を歪めた。
消え入る声で、『子供達は?どこ?』泣きながら、辺りに手を伸ばした。



寝惚けてそんな事を言っている?


そうじゃねぇ…。


実は、俺ががうららと立樹の間に横たわったつくしを自身の寝室のベッドへと運んだんだ。

五人もいた子供達も成長して、一緒の寝室で寝ることがほぼなくなっていた。
ここ最近では一番下の息子の立樹でさえ、彼等の寝室で眠らない日が増えていた。

今日は朝から完全なオフの日だ。
つくしと久しぶりにゆったり出来ると思っていたし、そんな日になると心待ちにしていた。

それなのに、つくしは事もあろうか俺とのベッドではなく、子供達のベッドに潜り込んだんだ。






西門家に向かうまでの道中、後部座席に凭れ、何か物思いに耽っている司。
執事の三澤は、司の隣に腰掛けながら、その様子を正面の進行方向を向きながらもその心の動きを探っていた。

司は物凄く穏やか表情をしたかと思えば、苦悶の表情に変える。
そして、時折物思いに耽るような表情を見せていた。

三澤は車に一緒に乗り込む前に、司たちの過ごす自室の前の廊下の清掃をしていた使用人から得た情報から何かしらあったことは分かった。

つくし様の泣き声が聞こえてきたかと思ったら、司様に対して大層に憤慨しているのではと思われる声が聞こえてきたとの報告を受けたのだ。

司様がつくし様に対して詰問していて、それが元でその様な事態になったと考えるのが自然な流れだ。

昨日のつくし様の動向からは司様の勘に障ることは"ほとんど"なかったように思えたのだが。



さてさて、どうしたものか。



三澤は先ずは西門家に『司様に急用が舞い込んだために、朝の早い時間に訪問する』とその様に伝えおいた。

急用などの内容など聞いて来るような人たちではない。
だが、つくし様との間に何かしらあり、探りを入れに来たのだと総二郎様に思われるのも司様にとっては癪に障ることだろう。

結婚して何十年と経った夫婦の痴話喧嘩が元で、朝の早いうちから訪問させてもらっている等と西門家の者にまで悟られるのは、何だかこちらの身が縮こまる。

仕事の問題なら先ずはメールで用件を確認して相手に伝え、総二郎様の帰宅を待ってから会いに行くのが筋というものだ。

三澤は司の表情を伺いながらも、あれやこれやと思案していた。




大通りを抜けると少しばかり樹々が覆い茂り緑が多い地域に入ってきた。
もう少し先にある角を曲がると西門邸を囲んでいる塀が見えてくる。



ピンコーン



この音に素早く反応したのは司で、自身のスマートフォンを(プライベート用)即座に取り出した。

画面を覗き込みながら、ホッとした顔をしたかと思ったら、凄まじい早さで何かしらの文章を作成して、送り返している。

司のプライベート用のスマートフォンはごく限られた人たちしか繋がっていない。

その中の人たちでしかもLINEのやり取りをする間柄で、しかも文章での会話をする間柄というと、つくしか、娘たち。
そして、姉の椿くらいなものだった。
(友人や息子たちは承諾や挨拶だけの本当に簡単なやり取りしかしない)

今回は司が文章を打ち終わり、暫くすると相手から『ピンコーン』『ピンコーン』と凄まじい文章の往来があった。

「お嬢様ですか?」

三澤はあえてつくしの名前を挙げずにおいた。

「あぁ、ひいろだ。みのりからも来ている」

先程までの苦悶の表情は何処へやら。
司は晴れ晴れとした表情に変わり、三澤にLINEの大まかな内容を話して聞かせた。

「三澤、ひいろとみのりがこれから邸に帰って来るそうだ」

「そうですか。賑やかになります」

三澤はその言葉を聞いただけで西門邸を朝の早い時間に訪問する理由が出来たと喜んだ。

「お嬢様方がお見えになるために、西門で使用している茶を少しばかり頂きたいと話しておきましょう」

「そうしてくれ。…おっ?!三澤、ひいろからも抹茶を用意してくれとさ。それも早めに用意出来るかだとよ」



何と?!!



三澤は吉報に思わず小さくガッツポーズをするほどだった。

司は、娘たちが邸に来て、自分たちにチョコレートを使ったお菓子を作ってくれるんだと三澤に聞かせている。

この車に乗り込んだ時の二人は、空気がピリピリしていた。

そんな二人の様子を見ていた司専用の運転手は後部座席のピリピリした雰囲気が少しばかり軽減したことにホッとした。

角を曲がるためにウィンカーを出す。
その瞬間、バックミラーで二人を確認すると、スマートフォンに一生懸命に何かを打ち込んでいる主の司と、安堵している三澤がそこにいた。
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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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