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チョコレートはセピアに染まる(後編)

司はあたしが寝ている間にいつの間にか出掛けていたらしい。

「すんげぇ匂いだな」

甘い食べ物が苦手な司はそう言って苦笑している。
なぜか手にはワインを携えている。

「買って来ましたの?」

「ひいろに云われたシャンパンを買ってきたぞ」

手に持っているシャンパンを高らかに掲げる。

「わざわざ、司が買ってきたの?」

思わず聞いてしまった。

…へぇ。
いつも何か欲しいものがある時は邸の者に頼む司がねぇ?

あたしの問に、司は少しだけ不敵な笑みを湛えた。

「まぁな」

司が手にしていたのは、シャンパンだけじゃなく、最高級の抹茶も携えていた。

「そのお抹茶って、西門さんのところのものでしょ?」

「ひいろから連絡が入ってな。お菓子を作ってお前を喜ばせるとか言ってるだろ?だからだな…」

「そう。お父様は甘いチョコレートは食べれませんでしょ?」

ひいろがそう言いながら、少しだけ意地悪な顔で自分の父親を見つめる。

「そうそう。私たちママにバレンタインのチョコを作ってあげるけど、あっ、開万と立樹にもね。でも、パパはいらないよね?って連絡したの」

みのりがあたしたちの家族のグループLINEを見せてきた。

…本当だ。

クスクス


甘いチョコレートなんて、大の苦手。
それでも娘たちの作ったお菓子はどんな事をしても食べたいんだ。

スマホを笑いながら覗いているあたしに、わざと厳つい顔をして見せてる。
きっと気が緩んだら、表情がニヤケそうなんだろうな。



司 『母親にバレンタインって、父親の俺にはないのか?』
みのり『パパ、だってチョコレートは苦手でしょ』
ひいろ『そうよ。作っても食べないとかは無しですよ。食べれるのですか?』
司 『それじゃ、抹茶でも買っておくからそれを使ったチョコレートなんて、作れるか?』
みのり『大丈夫かな?お姉さまにお任せするし』
ひいろ『私?分かりましたわ。それならチョコレートに合うワインを数本用意してくださいよ』



読み終わって、司と目が合う。
それで、わざわざ西門さんの所に足を運んだの?

それで、トリュフの一部はパウダーをかけないでって、みのりが言ってたんだ。

なるほどね。

「良い夫だろうが?」

「良い娘を持ったに尽きるんじゃない?」

あたしと司が笑い合うのをひいろとみのりがホッとしていると同時に、嬉しそうにして見ている。


何か心配させちゃったな…。

それでも、そのお陰で娘たちと楽しい時間を過ごせてるから、良しとするかな。


「抹茶が届いた事ですし、トリュフとロッシェを完成させますか?ねぇ?」

手が止まってしまった娘たちに作業を促す。

「もしかして、何種類も作ったのか?」

「パパ、何~、その顔?一瞬だけど物凄く嫌そうな顔をしたよね?」

みのりは司の表情を見逃さなかった。

「ダメだよ!パパ!折角、ひぃちゃんとみぃちゃんがパパとママにバレンタインのチョコを作りに来てくれたのに~!」

うららは姉たちがバレンタインデーのために帰宅したと思っているようだ。

『目が覚めたらお姉ちゃんたちがいるんだもの』そう言って姉たちの腕を取って、凄くニコニコしていた。



今更だけど、あんな事を書いて送ったと思うと何だか無性に恥ずかしい。

それにしても、何であんな事をLINEで送ったんだろ?

自分でLINEを送っておきながら不思議で仕方ない。







アフタヌーンティーはあたしたちの作ったチョコレートのお菓子でいっぱいにした。


開万と立樹はスイーツも大好きな男に育った。
二人ともチョコレート好きだ。
(甘過ぎなものはさすがに苦手だけどね)

下の子供達は満足して、各自の部屋に戻った。

ひいろとみのりは後片付けを手伝ってくれてる。

「あぁ、良かった。本当に。今朝のLINEを見てママの頭がおかしくなったと思ったからね?」

「本当に」

二人の娘に見下ろされ、軽く睨まれる。
(なんせ、あたしより身長が高いものですから)

「本当にごめん。はぁ、何なんだろ?本当に変な夢でさ。へへっ。あの後一眠りして起きたらスッキリしてたのよね」

起きた時、時計を見たら11時頃になっていたもんね。

「確か7時前に変な夢で起きてさ。それから貴女たちにLINEしてね。それから一眠りしたんだ」


うん。
ちゃんと覚えている。


「お母様?言っておきますけど、もう若くはないのですからね?」

「そうよ。ママ。もう少しで生誕してから半世紀になるんでしょ?」

娘にもう若くはないと念押しされ、またまた睨まれる。

何なんだろ。

娘に言われても傷つくどころか、嬉しいが先にくるから困ったもんだ。

「やぁね。生誕半世紀まであと二年あるわよ。ププッ」

「ハァ…。本当に、いつものお母様ね」

「こっちが怒ってんのに笑ってるしね」

二人は呆れた顔であたしを見て、二人同時に肩を竦めた。

「本当に大丈夫なの?何か心当たりないのですか?」

ひいろの言葉にみのりが止めの一言を放つ。

「知らないうちに心が疲れているとかあるんじゃない?」

「う~ん、そうなのかな?でも、貴女たちの顔を見たら、ますます元気なんだけどね?何か、普段と違うことといえば、昨日は飲みに行ったのよね…」

「そうなのですか?何時に帰って来たのです?」

「何時だろ?帰って来たら『我が家』の面々は寝ていたからね…。そこは覚えてないな…」

昨日の帰ってからの行動を思い出しながら、二人に伝えた。

帰宅してからお風呂に入ったのも覚えているし…。
あぁ、でも、うららと立樹のベッド(キングサイズ)に潜り込んだと思ったいたんだけど、目覚めたら寝室だったの…。
夢の中でのひいろとみのりは、今のうららと立樹と同じく小学六年生と二年生だったのよね…。

それで、夢の中だから、ごちゃごちゃしたのかな…。

あたしの話を聞いた二人は物凄くホッとした顔をした。

「まだ、完全に酔いが覚めていなかったんじゃない?」

「きっとそうですわ。私なんて、お父様が何かお母様に多大なストレスを与えたのではと考えたんですからね?」

「まぁね。わたしも実はそう思ってた」

「それで、私なんてお母様より先にお父様に事の次第をお聞きしてましたから」

「まっ、疑うのは仕方ないよね?」

美しい姉妹は二人で頷きあい、同調し合っている。

「おいおい。そういう会話を当の父親のいる前でするか?」

司は器用に片眉を吊り上げ、キッチンに立って話し込んでいるあたしたちを見た。

「そんなに変な会話なんてしてないでしょ?パパ」

「そうよ。むしろ、お父様の前で出来るってことは、信頼もしているってことよ」

「良かったね。司。娘に信頼されて」

つくしは司を見て微笑む。

「…ったく。お前は…。完全な酔っぱらいの奇行だったってことなんだよ」

「エヘヘヘ。本当にごめんね。それにしても、あのLINEは本当に恥ずかしいよ」

「誰にも見せませんよ」

「そうよ。ママからのラブレターだもんね。うららたちにも見せないよ」

美しい姉妹が二人でこちらを見て微笑みかけてくれた。

「お母様、大丈夫ですよ」
「うん。大丈夫」

そう言ってこちらを見て微笑む娘の姿は夢の中の彼女たちと重なって見えた。








その夜、ベッドに横たわりそっと司の手を取った。

「どうした?」

「いやさ、最後は貴方とまた二人になるなってさ」

「いいだろうが?」

「…嫌だな。ちょっと寂しい」

「お前な…。なら、もう一人作るか?」

つくしの手首を取り、抱き寄せてきた。

「ハァ?アホか?無理無理!!」

「出来ないことはねぇ…」

そう言いながら、首筋に顔を埋めてくる。

「えっ?アホか?馬鹿?!ほ、ほら、もう少しで本当におばあちゃんになるでしょ?遅かれ早かれ、…きっとさ」



あたしの言葉に、ぴたりと動きを止めた。

そして、じっとあたしの顔を見つめる。



「今、少し寂しいって思いを俺にも的確に移しただろ?」

「…ちゃんと移った?」

あたしは司の目を見つめ、頬に手を添える。

「あぁ、確実に移ったな。この寂しさを、きっちりと温めててもらうからな」

優しい、少しだけ切ない表情を見せてる。

「…若くないから、手加減してよ…」

「わかってる。出来る限りな…」







バレンタインデーの本番の日はきっとあの子たちは各々の彼氏と過ごすのだろう。

子供達は年々、あたしの手から離れていく。

少しだけ寂しい思いを夢の中で再確認したのかもしれない。

今年のバレンタインデーは少しだけセピア色に染まった。


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コメント

Re: 〇〇様

ちょっとでも、ほっこりとして貰えてありがたいです。

おっしゃる通り、今、コロナウィルスで世の中のプチパニックとなってます。

お子さんがいる家庭では、子供達がいるから仕事に行けないとか、ご飯の支度などがさらに大変になったといろいろな弊害が起きてきてます。

今回の作品では、
子育てって以外とあっという間に終わっちゃうんだよね。
その時はめっちゃ大変だけどね。

えりりんのそんな思いも乗せてお送りしました。

ですので、今、仕事に家事に子育てにと、ますます、てんてこ舞いの神さんたち。

きっと明日は良いことあるからーーー。

と、まぁポジティブシンキングで進んでいきましょう
Ψ( ̄∇ ̄)Ψ

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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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