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前髪の決まり手(後編)

あたしの顔を覗き込む麗しい青年。
困り果てたあたしの顔を見てとても可笑しそうに笑う。

「る、類~?…うん、もう…」

あたしは少し頬を膨らませ、ちょっとだけ睨む。
あたしのその仕草に、ますます笑いが止まらなくなっている。


クックックッ


おかしなもので、類が相手だと笑われているというのに全くイヤな気持ちがしないんだな。
これが…。

それでも、笑いを止めさせるために少しだけ恐い顔を作って話しかける。

「本当に止めてよ…。急に現れるとビックリするでしょ?」

あたしの言葉に春風みたいにフワリと笑った。

「クスクス…。急にじゃないよ。牧野が大声で叫んでいて気づかないだけでしょ?」

「そ、そうなの?」

「うん」

ニッコリと笑いかけられた。

「ランチの時間になってもテラスを訪れなかったでしょ?だからね。たぶん此処かなってさ」

高校のオアシスであった非常階段と同様に、大学の旧講堂の奥にあるこの踊り場のあるこの階段もまた、大学生となったつくしのオアシスと化していた。

高校生の時よりもグレードはアップしていている。
その場所は屋外の階段ではなく室内の階段で、心の中の声を露吐するときは大きな飾りガラスを開け放していた。
直ぐに裏手に森のような木々が立ち並んでいる。

類はあたしに降りかかった煩わしい出来事を知っているのだろか?

「司も人間だったんだね?」

徐に話を変えてくるのは類の特性でもある。
あたしがここでほんの少しの心のケアをして活力を得ているのを類は知っている。
わざと話を反らしているのか?

「ねぇ?本当にさ。邸にお義母様と戻ったらピンピンしているの。何で置いて行たってね。物凄く拗ねてんのよ。全く子供みたいな所があるのよね…」

「牧野と会って気が緩んだのと、日頃の疲れが一気に出たんだね」

「そ、そうなのかな…?」

道明寺家の主治医もインフルエンザでもないし、喉の腫れもそれ程著明でもないので、原因不明の発熱となったのだ。
(風邪薬は処方されていたけど)

あたしの言葉に類は満足そうな表情をした。


今朝あった女子の権力争いについてここでわざわざ話そうとは思わなかった。

二人でまったりと過ごした。
(類がテラスで購入してくれたサーモンとアボカドのサンドを頬張りながらだけどね)


午後の講義の時間が近づく。

「一人の時間と空間を持つのって凄く贅沢だと思う。誰にも何にも邪魔されないのって幸せだよね」

独り言のように類が呟く。

「自分の思いや力量と関係なく影が独り歩きするんだよね?世の中って面倒なんだ」
類は話ながらも目を瞑っている。

F4の面々が少しだけひねくれた性格を持つようになるのも頷いてしまう。

「類はここでもう少し休むの?あたし、行くね」

「うん…」

気持ち良さそうに目を閉じている類を見る。
あたし以上にいろんな圧力や勢力に日々巻き込まれているんだろう。
心のリフレッシュを必要としているのはあたしだけじゃない。

類の寝顔を少しだけ眺めてから立ち上がった。

「…牧野は牧野だよ」

目を瞑った状態だったけど、類はあたしに心を向けてくれていた。

「ありがとう。類」

あたしはオアシスを後にした。







その日からあたしに声をかけてくる人は後を絶たなかった。
必要以上に無下にすることもないから話しかけられれば其なりに対応していた。
とりわけ、大学からの入試組が多い気がした。
ここに入れるのだから、そこそこの経済的な余裕はあるのだろう。
それでも、ある程度の力のある人たちとの人脈というのも、これから就職や仕事をするに至っては重要になる。

そこでF4との繋がりだけを求めて来る人は、暫くすると本性を表し始めてくる。

『いつになったら、F4とのパーティ等に誘って頂けるの?』

痺れを切らして露骨に言ってくる人もいた。

勿論、純粋にあたしとゼミを共有し、同じ勉学に励み交流する人もいる。
(まっ、断然前者寄りの人が多いけどね。8:2の割合で)

今日もまた野心ギラギラの人に牙を剥かれた。

「カフェテリアで一緒にお食事したでしょ?何であの時、花沢類さんが来られたのにお引き留めしてくれなかったの?」

「えっ?あぁ、類は人見知りが激しいから…」

「私と牧野さんは友達でしょ?!何でフォローしてくれないの?一向にお近づきになれないじゃない?わざと?!」

偉い剣幕で睨まれた。

この人とはゼミの取り方とかが似ていて、お互いにわからない所を補えるようになれるんじゃないかと思っていた。

残念というよりは寂しくなった。



「ふん。ほら見なさい。牧野つくしは牧野つくしよ。こんな人にすり寄っても何にもないわ。馬鹿ね」

浅井が通りすがりにその人に言って退けた。

「…な、何よ?」

いきなり外野からヤジを飛ばされた彼女はそそくさとその場を後にした。

「いい気味。あぁ~、スッキリしたわ。牧野つくし。これで分かったでしょ?貴女ごときの人に心底付いて行きたいと思う人なんて、ほんの一握りしかいませんのよ?」

浅井は少し勝ち誇った顔を見せる。
そんな浅井にこの言葉がすんなりと口から出てきた。

「ありがとう」

「なっ?!!」

ふるふると震える指であたしを指差してくる。

「ま、牧野つくし?!あ、あんたね。人に裏切られていると云うのに、微笑んでいるんじゃないわよーーー!!」

「えっ?あっ?笑ってた?…そっか。そうなんだ…。…うん。やっぱり浅井、あんたには『ありがとう』だわ」

あたしの言葉に相当なすっとんきょうな顔をしている。
何時ものツンツンしている表情とはまるで違っている。
我に返った浅井は機関銃のようにまくし立てた。

「あ、あなたね?!あぁー、嫌い。私、あなたみたいな人って、本当に嫌い!ちょ?!ちょっと?!何を笑ってんの?!」

あたしは、嫌いだと連呼されているのに可笑しくて堪らない。

「あたしも嫌いよ?でも、ありがとう」

そうなんだ。
あたしもね、あんたには相当やられて来ているから、絶対に好きにはなれない。

けどね。
自分の気持ちに正直に接してくれるあんたの行動は認める。

その後ろから鮎原と山野が心配そうに見ている。

「あっ、鮎原、山野。あんたたちも浅井と一緒にいた方がいいんでしょ?素直になって一緒にいたいた方がいいよ」

鮎原と山野はあたしの言葉に顔を見合せた。

あたしは二度目のありがとうと、友達との仲直りのきっかけを浅井に送った。
送られた浅井はあたしを差す指がさらにプルプルと震えている。

「あ、あんたねーーー!!所詮は牧野つくしでしょう?!少しだけ心に余裕があるからってねぇ!調子に乗ってんじゃないわよ?!!」

あっ、そうなんだ…。
あたし嫌味を言われても気にならなくなったのは何でだろう?って、思ってた。

あたし、少しだけ心に余裕があるんだ?

だから、嫌味にも耐えれるんだろうね。

いろいろとあたしの内面を代弁してくる浅井に、今回三度目の『ありがとう』を届けた。

案の定、顔を真っ赤にして、あたしにこれでもかと"牧野つくしのくせに"を浴びせさせた。




今日の浅井の前髪は物凄く決まっていた。
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コメント

Re: h〇〇〇〇〇〇m様

おはようございます。

もしかして、パスワードの解読した~い(〃ω〃)
という内容でしょうか?

パスワードは、このfc2ブログに載せている作品の中にありますよ。

そして、旧作というのはですね。
2018年の8月頃にムラゴンさんからちょこちょこと出していたものがありまして、こちらに移行する際に、ドバーっと一気に出せば良いものを、手を加えてしまってですね…。
今、旧作で出しているものは、
『悪友と親友』
『ひな祭り~』
『願い事』なのです。
(しかも、ちょっぴり(?)手を加えております)
『悪友と親友』は本来えりりんの、このつかつくの物語の骨組みになるモノなのです。シリーズのように続いているのですが手直し出来ないでおります。
(しなくても良いよ。とお優しいお声も頂いたのですが、一度手を加えると…)

お話は、えりりんのスマホの中に今も眠っております。
なので、このブログ以外は見ることはできません。

今年中にドバーと出せれば良いですよね?
(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪ ←〈他人事か?!!〉

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ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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