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前髪の決まり手(中編)



本当に妙な空気感。




浅井百合子の一言は本来なら、言われたあたし自信が嫌悪感を抱くのが普通というか、当然。
なのに、あたしはと云うと全くその通りと、むしろ感心してしまって、無意識に頷いて微笑んでいたらしい。

「さすが、牧野さん。懐が広いですわ。とんでもない失礼な発言でもその様に心から微笑まれるのですもの。ねぇ?皆さん?」

リーダーがあたしに向かって小鳩のような拍手を送りながら近づく。
(学部が違うから名前がわかんないの)

「えっ?へっ?…いや、いや。そんなんじゃないの…」

ブンブンと身振り手振りで否定するも、もう遅い。

リーダーは、あたしをこれでもかとよいしょしてくる。

『すぐに、ご謙遜するのですから~?』とか、『ご慈愛の深さといったら他の人と比べられませんわ~』とか。

よくまぁ、出てくるもんだと半ば感心してしまうくらい。

それに輪をかけるように、そこのグループの子が、このお正月に道明寺のお義母様に連れられて、(已む無く)美術館に足を運んでいたことをまるで自分の事のように皆に話して聞かせている。

「凄かったんですから。牧野さんが道明寺楓様に話しかけた後に、楓様が微笑んで返してられたのですのよ?凄いと思いませ~ん?」

その言葉でどよめく群衆。
『道明寺楓様が笑うことがおありなの?』そんな言葉が小声で飛び交う。

そう。
行きましたよ。
お義母様と二人で美術館に。

あぁ…。この人が言いたいのはあの時かな?

一夜漬けだけど、作者の生い立ち等、作品の世間での評価など其なりの知識を頭の中に入れておいたの。

『貴女、この作品の事をご存知でしたの?』
『はい。…と言いたいところですが、違います。道明寺に…。ウウン…。司さんにこれだけは押さえておけと云われて少しだけ勉強してきました』って、素直に答えたら凄く驚いていた。

それから、お義母様自ら製作された当時の時代背景も踏まえて話してくれたんだ。

多分だけど、お義母様の好きな画家を道明寺が知っていた事が嬉しかったのだと思うの。

「そうそう!遠くからで話の内容の全ては聞こえなかったのは残念でしたけど…」

「ねぇ?鮎原さんお話してください」

不意に浅井の友達の鮎原に話を振ってる。

「…えっ?えぇ…」

鮎原は咄嗟にしどろもどろになっている。
浅井の方を気にしつつ、鮎原があたしに聞いてくる。

「…道明寺さんも一緒に来る予定だったのでしょ?」

その通り…。
うんっ?

「何で知ってるの?!」

あたしの一声で周囲がどよめく。

道明寺も一緒に来る予定だった。
てか、だだのデートの予定だった。
お義母様の予定にあたしたちが便乗する形。

多分だけど、西田さんらの陰謀(?)計らい(?)でお義母様と顔を合わせる事になったのだと思う。
『日本で展覧されるのが初めてになる作品が多く展示されるので、是非とも足を運んでほしいと前々からオファーがあった』とか。
『牧野様の今後のスキルアップに繋がります』とか。
『あの美術館に入れるのですよ?しかも作品の解説付で。しかもタダです』とかね。

終いには、『行かないと云う選択肢はございません』って言われたのよね。

あたしが随行する形になるのを西田さんはどうやってお義母様を説得したのか?
(まぁ、いいけど)

「道明寺さんが来館すると聞いていて、わたくしたちも足を運んだのですの…」

ほんの少しだけ浅井を気にかけながら、今度は山野が話した。

きっと道明寺が現れなくてがっかりしたことだろう。

道明寺はと云うと、原因不明の発熱のために行けなかった。
鬼の撹乱とはいえ、当然のことながら急遽あたしとお義母様の二人での閲覧会となったわけだ。

「…どうやって、その情報を知ったの?」

あたしはあまりの事で心の声を言葉にしてしまっていた。

鮎原はあたしの言葉に一瞬、罪悪感に捕らわれた表情をするも直ぐに顔を引き締めた。

「叔父様がおっしゃってましたの。道明寺楓様がご子息様と来館すると」

えっ?
まさか?

あの優しそうで穏やかな副館長さん?
(名字が確かに鮎原さんだった)

そうなんだ…。

館長さんはインフルエンザでお休み中とのことだった。
なので副館長さんがあたしたちの案内役を行ってくれてた。

「浅井さん。分かったでしょ?牧野さんを"所詮"呼ばわりするなんて、とんでもないのよ?オーホッホッホッホッ…」

リーダーが高らかに笑い、浅井がその言葉に唇を噛む。

周りが一瞬にして浅井を異端児扱いするような目で見ている。
そして、リーダーを悪党を懲らしめた英雄の如く誉め称えている。



あっ…

そういう事ね…。



丁度、講堂に講師が入室してきたので、リーダーたちは講堂から退散した。




恐るべし女の勢力争い!!











「あぁ…。疲れた~。物凄く疲れたーーー!!」



最後は大声で鬱憤を発散させる。


大声で叫べるところを大学の校舎の中で見つけたの!
(凄いでしょ?!!)

そして、もう一度。


スゥッー


「あたしをダシにして、勢力争いをすんなーーー!!アー、スッキリ…」
「何の勢力争い?」

不意に頭上から降ってきた声に驚いた。


うわあっっ!!


「牧野。そんなに飛び上がること?階段から落ちちゃうよ?」

そう言いながら、階段から落っこちそうになっているあたしの腕を引いてくれる。




薄茶色のビー玉の瞳を持つ麗しの青年が、少しだけ疲れて荒んでいるあたしの心に爽やかな春風を運んできた。

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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

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ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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