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願い事29

つくしと司は、一の鳥居を潜り、石畳を歩いた。
暫くすると、少し開けた場所に出た。

その場所には、参拝する前に身体を清めるための手水舎が建てられていた。


「ねぇ?このお水で清めるんだよね?」

「そうだ。手順は知ってるか?」

「て、手順なんてあるの?」

思わず、目の前で柄杓を手にしている父親を見る。

「えっ?!へえっ?!手順?手を洗って、うがいするんじゃないのかい?ねぇ?ばあちゃん」

思わぬ注目を集めた晴男は直ぐ様、自身の母親の澄えに矛先を向けた。

「おらたちは、あんまり気にした事がなかったわ。なぁ?」
親子で顔を見合わせて頷きあっている。


つくしは司の方を見た。

「俺が手本を見せるから見てろ」

「うん」

つくしは司の流れるような美しい動作を間近で見る。

司は右手で柄杓を取り水をすくうと、左手にその水をかけた。
そして、柄杓を持つ手を持ちかえて右手を清めた。

何故だかそれだけで絵になる。

司はまた右手に柄杓を持ち、左手に水を注いで口に含み吐き出した。

その一連の動作は、流れるように行われ、日常でも常に行っているのではないかと思うほどだった。

司は最後にもう一杯水を汲み、柄杓を縦に立て自身の両手も含めて柄杓ごと水を流した。
そして、元通りの位置に柄杓を立てかけた。



ほえ~

スッゴい…

プロモーションビデオで『道明寺司の神社の正しいお参りの仕方』なんてのが出来そうだと思った。

家族の皆も道明寺の所作の美しさと凛々しさに魅せられてる。

てか、あたしたち家族だけじゃなくて、その他の参拝の人たちも何事かと、集まっているじゃない?!

女の人たちなんて、年齢問わずボーっとみとれているし。
うちのママまでボーっとしているし…。

まぁ、そうなっちゃうよね…。

あたしだって、思わず引き込まれたわよ。

「おい、わかったかよ?」

道明寺が先程使った柄杓を使うように目配せをしてきた。

「えっ?!あっ、うん。大体は…」

見よう見まねで柄杓を持ち、手を清める。

「水を飲むなよ?邪気を取り込むと云われてるからな。それと、最後の柄杓を洗い流すことで、完全に邪気を払い終わるんだぞ?」

あたしが始めると家族の皆も揃って清め始めた。

無事にお清め終了。
家族皆でアイコンタクトをとる。
さてさて、拝殿まで行こうかと思ったところで、

うわ~
凄~い

一斉にそんな言葉が飛び交った。

見て~
いいな~
きれいだね~

人々の称賛の声。

何々?

後ろを振り返って見ると、二の鳥居の方から花嫁行列がこちらに向かって歩いて来る。

花嫁さんは綿帽子で顔が全て見えないが、凄く穏やかな表情をしているのがよく分かった。

新郎と共に祝福の声をかけられる度に、二人が顔を見合わせて微笑んでいるのだ。

ご両親や家族の人たちも皆が幸せそうで、周りの空気感をさらに暖かいものに変えてくれている。

幸せな想いは周りをも幸せにするパワーがあるのだと、改めて実感した。

目の前を通るときに、思わず、
「おめでとうございます」
と言って、頭を下げた。
自然と言葉が出てきたのだ。



隣にいる道明寺の横顔をじぃと見つめた。

「なんだ?どうした?」

「ううん。見たかっただけ」

「変なヤツ」そう言って道明寺は笑った。

「ねぇ、道明寺。凄く神様に歓迎されている気分じゃない?」

「だな。結婚式は祝い事の最上級だからな」

そう返して来た道明寺の手をそっと握った。

「嬉しいなぁ…」

「はぁ?この会話で何でそうなる?変なヤツ…」

道明寺は握っているあたしの手と自分の手を絡めた。


道明寺が七五三や結婚式などの沢山の祝い事に立ち会えて、嬉しいって気持ちになってくれていることが物凄く嬉しいんだ。



あれ?


ここで結婚式するって事はだよ?
何でカップルが別れるなんて伝説があるんだろ?

う~ん?

神社の人に御参りしたら聞いてみよ。



今いる手水舎の広場より左手に二の鳥居があり、石畳の十数段の階段となっていて神殿に向かっている。
花嫁行列か通って来た道順だ。

右手に行くと、遥か昔に万葉集で詠まれた時と同じく、神鹿が数十頭飼われていて、天然記念物とされている10数種類の日本鶏の舎もある。

奥には御神木が青々と枝を伸ばし、そのまた奥には宝物殿がある。



「なぁ、道明寺さん。折角弥彦さまに来たんだっけ占いでもしてもみねぇかね?」

突然、おばあちゃんが言い始めた。
おばあちゃんの言葉にパパもママも微笑んでいる。



おばあちゃんについて行くと、御神木の近くに二つの石が鎮座していた。

「願い事を思い浮かべて持ち上げてみてくれね」

道明寺に向かっておばあちゃんが話しかける。

「これくらいの石、楽勝だろが」

「なめてかかると何事も、とんでもなぇ事になるんだろ?何を願うんた?」

おばあちゃんの言葉で道明寺の表情が一瞬で真剣になった。

そして、
「俺様の願い事はこの世でたった一つしかねぇ」

そう言ってあたしを見る。

道明寺の言葉に嬉しそうに頷きながらおばあちゃんか道明寺に声をかけた。

「んじゃ、真剣に向き合ってくれね」

おばあちゃんの言葉を聞いた道明寺は、そっと目を瞑った。

数秒経った後、目をしっかりと開けて、一つの石を持ち上げた。

「今、持ち上げた感覚を忘れるなね?はい。次、隣の石。今度は、違う願い事にすっかね?」

おばあちゃんの言葉を受けて、道明寺がこっちを見た。

「お前、さっき七五三の着物を着ている親子連れ見て、子供は好きだって、言ってたな?」

「えっ?あっ、うん」

何組か七五三の家族とすれ違ったときの会話を思い出してくれたんだ。

『七五三の着物を着た子供達可愛いね。いいね。本当に可愛い』
『子供好きなんか?』
『多分好きな方。かな?』
『そうか』
『うん』


道明寺はまた最初と同じく目を瞑り、暫くしてから目を開けて、持ち上げた。



「二つとも持ったぞ。どうゆう事なんだ?」

道明寺がおばあちゃんに尋ねる。

確かに、男の人なら持ち上げられなくもない大きさの石。

ましてや、怪力人間の道明寺なら持ち上げるだろう。

「素直に正直な持ち上げた時の感想を細かく言ってみてくれね」

おばあちゃんの言葉を受けて、道明寺は順番に持ち上げた石の感想を話始めた。

「最初の石は見た目よりも重く感じたな。持ち上げ始めな。石を頭上に上げるときはそうでもなかったな」

そうか、そうかと、おばあちゃんは頷き、パパとママはその答えに手を取り合っている。

「次の石はどうらったや?」

「次か?何だか知んねぇけど、最初のような重さも、全く感じとれねぇ。軽く持ち上がったぞ」

その言葉におばあちゃんはホホっ~と笑った。

「何を願ったか分からんろも、何事も少しは苦労した方が有り難みが分かるってもんだ。中々良い結果らったんじゃねぇか?」
そう言って笑ってる。

「どうゆう事?おばあちゃん?」

おばあちゃんはあたしの方を見て、ニカッと笑った。

「持ち上げらんねぇのは、話になんねぇ。まぁ、願い事が叶う事はねぇってこと。大事なのは持ち上げたときの感覚なんだて」

「願い事の叶う迄のプロセスみたいな?」

「プ、プロレス?なんだそれ?」
おばあちゃんはあたしの言った言葉に首を傾げ、隣にいた進に意味を聞いている。


ふふっ

そうなんだ…。


「あたしも持ってみようかな?道明寺はどんな願い事したの?」

「はあ?お前、持とうとすんなよ。持ち上げれねぇなんて事があったら洒落になんねぇだろ?…いや、持てるな…。お前は…。でも、駄目だ!重くてやっとなんてことがあったら…。ブツブツ…」

見た目よりも実際にかなり重いらしい。


ふふっ


「神は信じないのに?」

「お前の事になると話は別」



そう言ってあたしの手をとって拝殿に向かう。


神に祈った事を問いただすもんじゃないよ。


おばあちゃんがそう言うので、何も聞かずにおこうか。
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プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




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