FC2ブログ

記事一覧

願い事27

つくしは醤油の芳ばしい匂いに誘われて、小さな小屋の中に入った。
そこには、大きな鍋で板状に切った大ぶりの蒟蒻が出汁醤油で煮られていた。

甘酒やおこわ。
それに粉菓子や団子などが並べられている。

散策している人達の小腹を満たすには丁度よい。

「蒟蒻にしようっと。道明寺もいるよね?それとも甘酒にする?」

「あっ?俺はいらねぇ」「いらねぇは認めません」

最後はつくしが言葉を被せてきた。

「一緒のものを見て、一緒のものを食べたいのに」

「わかったよ。しょうがねぇ…」

「じゃあ、蒟蒻でいい?残ったら食べるから」

「よく、食えんな?朝ごはんもかなり食ってただろ?」

信じられないという表情でつくしを見る司。

「別腹なのよ。別腹」

お前は牛か?と突っ込みたくなるが、牧野だからしゃなねぇと、一人で納得して解決した。

先客が何組かいた。

おこわ等をじっくりと見て回っているおばさんたちや、蒟蒻を買っているカップル。

そして幼い子供を連れている若い夫婦。



「何歳ですか?」

つくしは、伸びている前髪をハートのヘアピンでちょこんと留めている、可愛らしい女の子に声をかける。

女の子は指を4本立てて、4才であることを教えてくれる。

女の子は蒟蒻を買っている母親のセーターの裾をちょこんと握っている。

お腹がふっくらとしており、子供を宿しているのが分かる。

母親は蒟蒻を買い終わると、子供の手を取った。

「バイバイ」

つくしが手を小さく振ると、はにかんで手を振り返してくれる。

「バイバイでしょ?」

母親が優しく声をかけると、
「バイバイ」
と可愛らしい声で返してくれる。

母親はつくしに向かって軽く会釈をかえす。

女の子は待っていた父親に、
「バイバイ、ちゃんと言ったよ」
と教えている。

父親はそんな娘を愛しいそうに見つめ、抱き上げた。

若い夫婦は軽く会釈をして、もみじが紅く色づいている渓流へと向かって歩き始めた。

つくしは知らず知らずにその若い夫婦を目で追っていた。


「おい、牧野。二本でいいのか?」

「えっ?あっ、うん。二本下さい」

板状に切られている大ぶりの蒟蒻が串の替わりに割り箸で刺してある。

からしをカップの脇にたっぷりと付けてもらった。

「へへっ、美味しそう」

嬉しそうに話すつくしの横で、真顔になる司。

「俺、もしかして初めて食うかもしんねぇ…」

「うそ?!」

「嘘じゃねぇ…」

「あのね?嘘というのは、あんたが嘘を言っているとは思ってないんだよ。日本人なのに
食べたことがないっていうことに対してだからね?」

「そうなんか?」

「そうだよーーー!!」

つくしは司の顔を見て、ケラケラと笑いながら、蒟蒻を一口頬張った。

司はつくしが笑ってくれたことに胸のつかえが取れた気がした。

つくしが羨望の眼差しで若い夫婦を見ているなと感じていたからだ。


年も恐らく同じくらい。
父親は背が高くスラッとしている。俺より少し低いくらい。
その上顔立ちが整っていた。
母親の背は恐らく牧野と同じか少し高いくらい。
顔立ちはベビーフェイスで柔らかな印象。
凄い美人ではないが、顔から性格の良さが滲み出ていた。

自分達と重ねて見ていたのか?

まさかな…。



司はつくしにそっと目を送る。

つくしは少しばかり目を細めて遠くを見ているようだった。
暫くつくしの横顔を見ていたら、視線に気づいたつくしが司の手を取った。

「行こう」

「あぁ」



なだらかな渓流に沿ってもみじが綺麗な色彩を披露してくれていた。

そこはもみじ谷と呼ばれているらしい。
もみじ谷には赤い観月橋が掛かっており、その橋の下も散策出来る。
橋の下な方を散策すると、その所にベンチが幾つかあり、俺たちはそこで腰かけて蒟蒻を食べることにした。

「ねぇ、さっきの子供、凄く可愛いかったね?」

「そうか?」

「はぁ?あんたの目って美的センスが無いわけ?」

「俺の服のセンスを見てもそう言えるんか?」

全身ハイブランドで固めていて、嫌味なほどに決まっている。
コーチコートの下は黒のタートルネックのセーター。
パンツはデニムなのだが、オーダーメイドかと疑いたくなるくらいにサイズがぴったり。

つくしは司の服装を見てムッとした。

司は、面白くないと云わんばかりのつくしに素直な想いをぶつけることにした。



「まぁ、顔の造りは整っていたな」

「でしょ?」

「ククッ、何で、お前が怒るんだよ?俺は人の子供まで可愛いと思えるまでにはなってなぇ。ただ…」

「ただ?」

「俺らの子供で、あんな顔立ちで生まれて来たら、いや、俺らの子供ならあの子以上になるな。そうしたら…、いや、顔立ちなんてどうでもいいか…」

「クスクス、わかったわよ。道明寺からそんな事を聞けるとは思ってなかった…」

手を太陽ともみじに向けて翳しながら話を続ける。

「欲を言うとね。子供がもし出来たら。女の子か一番目がいいなって思ってさ。あたしもあんたも一姫二太郎じゃない?」

そう言ってまた手を翳している。

「いろいろ、出来たらの話よ?あくまでも想像の話だからね?」

そう言いながら笑っている牧野。
少し切なそうに見えるのは気のせいか?

今日は牧野の希望を全部叶えてあげようと思った。

小さなことでも全部。



観月橋を渡たり、橋の真ん中ほとまで渡ると、もみじともみじの間に弥彦山の頂上がちょうど綺麗に写し出される。

「ねえ。写真を撮ろう?記念にとっておきたいの。ダメ?」

さっき、心の中で誓ったばかりじゃねぇか?

「男に二言はねぇ。斎藤、撮ってくれ」

牧野は俺の言葉に首を傾げたが、牧野の肩に手を載せると、牧野ははにかんで少しうつ向いた。




「一生の宝になるかも…」

牧野が小さな声で発したその言葉に、

「んな訳ねぇだろ?」

そう言って、華奢な肩をグッと引き寄せた。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

えりりん

Author:えりりん
ようこそ、おいでくださいました。

ここは、「花より男子」の二次小説置き場です。

つくしと司のその後の未来を、勝手に妄想して、こんなだったら……♥️

等と、妄想に妄想を重ねたブログです。

よろしければ、覗いて見てくださいませ。

ただし、素人の勝手な思い込みで書いております。

皆様のお考えと異なる事があるかと思われますが、ご了承くださいませ。

原作様の神尾様には、素敵な作品をこの世に送り出して頂いて、本当にありがたく思っています。

えりりんの妄想で少しでも楽しんで頂けたらなと思っております。



出版社様、原作様とは、一切関係はありません。




PVアクセスランキング にほんブログ村